訪問看護師は1日に何件まわる?ルートの決め方は?
はじめに
「訪問看護師さんって、1日にどれくらいの家をまわっているの?」
「どうやって順番を決めているの?」
利用者さんやご家族から、よくいただく質問です。
病院の看護師は、病棟の中で何人もの患者さんを同時にみています。
でも訪問看護師は、利用者さんのお家に一件ずつ訪問してケアをするのが特徴です。だから「どのくらいの家をまわるのか」「どうやってルートを決めているのか」は、訪問看護を知るうえでとても大事なポイントなんです。
今回は、訪問看護師の一日の流れをイメージしながら、件数やルート決めの工夫について分かりやすくご紹介します。
1. 訪問看護師は1日に何件まわる?
訪問看護師が1日にまわる件数は、だいたい4件から6件程度が一般的です。
✅ どうしてこのくらい?
訪問看護は1件ごとにかかる時間がちがいます。
- 短いと30分程度
- 長いと1時間以上
そのあとに「移動時間」や「記録(カルテへの入力)」も必要です。
たとえば、午前に2~3件、午後に2~3件訪問すると、だいたい夕方には1日の業務がいっぱいになる、というイメージです。
2. 実際の1日のスケジュール例
より具体的にイメージできるように、ある訪問看護師の1日を例にしてみましょう。
- 9:00 Aさん宅でバイタルチェック(体温や血圧測定)+清潔ケア(40分)
- 移動 20分
- 10:00 Bさん宅で点滴処置(60分)
- 移動 20分
- 11:30 Cさん宅でリハビリの様子と状態観察(30分)
- 12:30 昼休憩
- 13:30 Dさん宅で服薬管理+入浴介助(60分)
- 移動 15分
- 15:00 Eさん宅で褥瘡(床ずれ)の処置(40分)
- 移動 20分
- 16:30 ステーションに戻り、記録・報告・翌日の準備
この例では1日5件訪問しています。件数が多すぎると移動や記録で疲れてしまい、逆に件数が少なすぎると効率が悪くなるため、4~6件がちょうど良いバランスなのです。
3. ルート(訪問の順番)はどうやって決める?
訪問の順番、つまり「ルート」はとても大事です。効率よくまわらないと、時間が足りなくなったり、利用者さんを待たせてしまったりするからです。
✅ ポイント① 利用者さんの希望時間
利用者さんやご家族の希望はとても大切です。
- 「朝にお風呂に入りたい」
- 「夕方に薬を飲むので、その前に来てほしい」
- 「家族がいる時間に訪問してほしい」
こうした希望を尊重して訪問時間を組みます。
✅ ポイント② 医療的な必要性
医療処置は時間が決まっていることも多いです。
- 点滴はこの時間に終わらせたい
- インスリン注射は食前に必要
- 薬の効果に合わせて訪問が必要
こうしたケースでは、希望よりも医療的な必要性を優先します。
✅ ポイント③ 移動の効率
訪問先が離れていると、それだけ移動時間が増えます。
- 同じ地域の利用者さんをまとめて訪問する
- 遠方の人は1日の最初か最後に訪問する
- 渋滞や坂道なども考えて順番を調整する
効率を考えないと「移動ばかりで看護ができない」という状況になるので、事務スタッフや管理者が細かく調整します。
4. 訪問予定表の作り方
訪問看護ステーションでは、訪問予定表(スケジュール表)を作って管理しています。
作り方の流れはこんな感じです。
- 利用者さんやご家族の希望を聞く
- 医師の指示書やケアマネジャーのケアプランを確認
- 看護師やリハビリスタッフのシフトと照らし合わせる
- 移動時間を考慮してルートを決める
最近では、タブレットやスマホアプリで予定を共有し、訪問先でも確認できる仕組みが増えています。
5. 緊急対応が入ったらどうする?
訪問看護では、予定通りにいかないことも多いです。
- 「急に熱が出た」
- 「転んでけがをした」
- 「呼吸が苦しくなった」
こんなときは、予定を変更してでも緊急訪問をします。そのため、訪問看護師は常に柔軟に動けるように準備しているのです。
このときは他の利用者さんに時間を変更してもらうこともあり、スタッフ同士で連携しながら対応します。
車で運転しているときに後ろから救急車が近づいてきたら道を空けようとしますよね?
譲り合い、助け合いの精神で関わらせていただいています。
6. 訪問件数を増やせない理由
「1日にもっとたくさんまわれないの?」と思う方もいるかもしれません。
でも、訪問看護師の仕事は「ただ行って終わり」ではなく、質の高いケアを提供することが大切です。
- 一人ひとりの話をじっくり聴く
- 小さな変化を見逃さない
- 家族へのアドバイスも行う
- 記録をきちんと残す
これらを大切にするからこそ、訪問件数は1日4~6件くらいが限界なんです。
7. まとめ
- 訪問看護師は1日に 4~6件程度まわるのが一般的
- 1件の訪問は30分~1時間、移動や記録も含めるとちょうど良い件数になる
- ルートの決め方は
- 利用者さんや家族の希望
- 医療的な必要性
- 移動効率
をバランスよく調整
- 緊急対応が入ることも多く、柔軟なスケジュール管理が必要
- 件数よりも「丁寧で安心できる看護」が大事
おわりに
訪問看護師の一日は、スケジュール調整と時間管理の連続です。
ただ家をまわるだけではなく、「利用者さんの生活のリズム」や「病気の管理」を考えながら、一番良いタイミングで訪問できるように工夫しています。
だから、訪問看護師にとって1日に何件まわるかよりも大切なのは、「一人ひとりに丁寧なケアを届けること」なのです。
もしご家族やご自身が訪問看護を利用するときは、件数や順番にとらわれず、「安心して任せられるかどうか」を大切に考えてみてくださいね。
愛の手訪問看護ステーション 看護師 鷲尾拓也