訪問看護の介護保険と医療保険の違い
はじめに
「訪問看護を使いたいけど、介護保険と医療保険のどっちになるの?」
これは、ご本人やご家族からとてもよく聞かれる質問です。
実は、訪問看護は 介護保険 でも 医療保険 でも使えます。
でも、どっちで使うかは「年齢」「病気の状態」「要介護認定があるかどうか」で変わってくるんです。
今日は、小学生でも分かるように、介護保険と医療保険の違いを丁寧に説明します。
1. 訪問看護ってなに?
まず、そもそも「訪問看護」とは何でしょうか。
病院やクリニックの看護師さんは、病院に来る患者さんをお世話しますよね。
でも訪問看護師は違います。利用者さんのおうちに行って、病気や生活のお手伝いをする看護師 のことを言います。
- 体温や血圧をはかる
- 傷の処置をする
- お薬を飲めているかチェックする
- 入浴や清潔のケアを手伝う
- 不安な気持ちを聞く
こんなことをするのが訪問看護です。
そして、このサービスを利用するときに「介護保険」を使うか「医療保険」を使うかで仕組みが少し変わります。
2. 介護保険で訪問看護を使う場合
✅ どんな人が対象?
- 65歳以上で「要介護認定」を受けている人
- 40歳~64歳で「特定疾病(とくていしっぺい)」がある人(がん、難病、認知症など)
つまり「介護が必要」と認定された人が対象になります。
✅ どうやって使うの?
介護保険で訪問看護を使うときは、ケアマネジャー(介護のプランを考える専門の人)が作る「ケアプラン」に組みこまれます。
- デイサービス
- ヘルパー
- 福祉用具レンタル
- 訪問看護
などと同じように、介護サービスの一部として利用するイメージです。
✅ 料金は?
介護保険の自己負担は 1割~3割(収入によって変わります)。
残りは国や自治体が負担してくれます。
✅ どんなケアをしてくれる?
介護保険での訪問看護は、
- 生活を支えるための体調管理
- 介護をする家族へのサポート
- 日常的な医療処置
といった「生活を支える視点」が強いのが特徴です。
3. 医療保険で訪問看護を使う場合
✅ どんな人が対象?
- 要介護認定を受けていない人でも使える
- 年齢は関係なく、子どもから大人まで利用可
- がんの末期、急に病気が悪くなった人、精神科訪問看護が必要な人など
つまり、介護保険の枠に当てはまらない人でも利用できます。
✅ どうやって使うの?
医療保険の場合は、医師の「訪問看護指示書」 にもとづいて利用します。
主治医の先生が「訪問看護が必要」と判断したら、看護師が家に来てくれる仕組みです。
✅ 料金は?
こちらも自己負担は 1割~3割(年齢や所得によって変わります)。
医療費のルールにしたがって支払います。
✅ どんなケアをしてくれる?
医療保険での訪問看護は、
- 病気の治療や管理に重点
- 点滴や注射、医療機器の管理
- 急に悪くなったときの対応
といった「医療的な視点」が強いのが特徴です。
4. 大きなちがいを表で見ると
項目 | 介護保険 | 医療保険 |
---|---|---|
対象 | 65歳以上で要介護認定、または40歳以上で特定疾病 | 年齢関係なし、病気や状態で利用可 |
利用の流れ | ケアマネジャーがケアプランを作成 | 医師が指示書を発行 |
中心となる視点 | 生活や介護のサポート | 病気の治療や管理 |
負担 | 1~3割(介護保険のルール) | 1~3割(医療保険のルール) |
主な利用者 | 高齢で介護が必要な人 | がん末期、小児、難病など幅広い |
5. 両方を使うこともある?
実は「介護保険」と「医療保険」を両方使うこともあります。
例1
普段は介護保険で訪問看護を使っているけど、
→ がんが進行して急に病状が悪化したので、そのときだけ医療保険で利用する。
例2
高齢の方が介護保険で訪問看護を受けているが、精神科訪問看護も必要になった。
→ この場合は「医療保険」が優先される。
このように、状態や目的によって切り替えができる のも訪問看護の特徴です。
6. よくある質問
Q1. 介護保険と医療保険、どっちが優先?
👉 原則は 介護保険が優先 です。
ただし、がん末期や精神科訪問看護などは医療保険が優先になります。
Q2. どっちになるか分からないときは?
👉 ケアマネジャーや主治医に相談すれば大丈夫です。自分で制度を選ぶ必要はなく、その人に合った方法を教えてくれます。
Q3. お金は高くなる?
👉 どちらも自己負担は1~3割なので、急に高額になる心配はあまりありません。上限を超えた分は「高額療養費制度」などで戻ってくることもあります。
7. まとめ
- 訪問看護は 介護保険でも医療保険でも使える
- 介護保険は「生活を支える視点」 → 高齢者や要介護認定を受けた人が中心
- 医療保険は「病気の治療や管理の視点」 → 年齢を問わず必要な人が使える
- どっちが自分に合っているかは、ケアマネジャーや医師に相談すればOK
- 両方を切り替えて使うこともできる
おわりに
訪問看護は「病気を治すため」だけではなく、「その人らしく生活を続けるため」 のサービスです。
介護保険か医療保険かの違いはありますが、どちらにしても利用者さんや家族を支えることに変わりはありません。
「どっちで利用できるんだろう?」と迷ったら、まずはケアマネジャーや主治医に相談してみてください。制度のことは専門の人がサポートしてくれるので、安心して利用できますよ。
愛の手訪問看護ステーション 看護師 鷲尾拓也